銀杏
「…正直言って、こんなこと言うと引かれるかもだけど…咲と一緒にいて……ゴニョゴニョ。」
「は?何、聞こえない。もう一回言って。」
「だからー、その…咲に指一本……のは……」
「ちょっと!はっきり言いなさいよ。ぼそぼそと分かんない。二人だけなんだから平気でしょ?」
いつかの逆だ。
あの時は咲が恥ずかしくて口に出せなかった。
今度は尊がはっきりと言う番だ。
「つまり、大人の付き合いをしてもいいかな…て。」
「何それ。今までは何だったの?」
「んー、何だろ?」
「もう!尊の言うことは訳分かんない。」
「だから、家にいるときは咲といつも一緒に過ごしたいから…」
「いるじゃない。」
「…お前…ニブチン。」
「何よー!はっきりしない尊が悪いんでしょ。もういい。部屋帰る。」
「待てって。」
そう言うと立ち上がりかけた咲の腕を掴み、尊の方へ引き寄せた。
「きゃっ…何す…」
バランスを崩して胡座をかいていた尊の足の上に尻餅をついた。