銀杏


「いつか、幼い頃に描いたこの絵のように結婚式をしよう。その時は博貴さんも出席してもらって。」

「…うん。」

尊の胸に顔を埋めて涙を拭う。

尊の手が咲の頭を撫でる。

「泣き虫。」

「尊のせい…なんだからぁ。う…ぐす。えっ…」

「咲、泣き止め。父ちゃんと母ちゃんに話に行こ?」

「は?今から?」

「咲がやっぱり止めたなんて言い出さないうちに。」

「言わないよ。」

「俺が不安なの。行こ。」

咲の手を取った尊の手。

あ、そうだ。

「尊、ちょっと待って。」

「急ぐの?こっちのが大事だろ。」

強引に連れて行かれた。

おじちゃんもおばちゃんも、突然のことに随分驚いていたけど、二人で決めたならと賛成してくれた。

おばちゃんは「これでやっと本当の親子になれるんだね。」と涙を流していた。

私も『おじちゃん、おばちゃん』と呼んでいたのを『お義父さん、お義母さん』と呼べるのは嬉しい。
特に『お義父さん』なんて言うのは初めてだ。

気恥ずかしさから初めはすんなり呼べなかった。




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