銀杏
「咲、さっき言いかけた話何?」
「え。ああ、手貸して?」
「?」
尊の右手を握ったり、左手を握ったり、色んな握り方をした。
尊は訳が分からないといった顔をしている。
「う~ん?」
「何やってんだよ?」
「あのね、感触が…同じというか…似てるというか…。」
「誰と?」
「お母さん。」
「咲のか?」
「うん。何で一緒なんだろう。」
「……」
首を傾げてる咲に尊は躊躇いがちに口を開いた。
「咲の記憶にある手の感触は…最初から俺の手だよ。」
「え?どういうこと?」
「お前が生まれた時は、俺ちょうど一歳だろ。よく母ちゃんは咲んちに行ってたらしい。で、いつも手を触ってたって。
保育所の送り迎えでも保育中もしょっちゅう手を繋いでたらしい。
だから咲が母ちゃんと手を繋ぐのと同じぐらい俺も繋いでたって訳。
咲の母ちゃんが亡くなってからは俺といつも一緒だったろ。記憶が刷り変わってもおかしくはない。」