銀杏
手続きを済ませると尊はトイレに行った。
咲は興奮冷めやらずといった感じでまだ赤い。
椅子に座って手で顔をパタパタ扇いで待つ。
「…天宮さん。…天宮さん。」
………
「…一文字さん。」
「…はい?」
誰かに呼ばれて振り向くと……。
「ひでぇ。お前わかってる?もう一文字じゃねえよ。」
口を尖らせる尊に焦る。
「…え…えへへ。そうでした。」
「もう天宮咲なの。早く慣れてね。」
天宮…咲。
うわ~、恥ずかしい!
「あーもう!また赤くなって固まってら。ほら行くぞ。」
尊に引っ張られて外へ出た。
「あー、緊張した。提出するだけなのに肩凝った。」
「ははっ。緊張しすぎ、天宮さんの奥さん。」
「もう!」
尊の意地悪は買い物に行ってもしばらく続いた。