銀杏


「指輪はね、…結婚式の時でいい。それと結婚式はお兄さんが見つかってからがいい。…ダメ…かな?」

「咲がそうしたいなら。」

「ありがと。」

「咲、愛してる。」

「私も…大好き。」

尊はおでこに軽くキスをすると「おやすみ。」と目を閉じた。

尊はちゃんと分かってくれてる。私の気持ちも、誤解もないように。

この日を境に尊は試合モードに入り、咲もまた大会に向けての練習が激しさを増していった。


入籍したといっても何ら変わらない生活。

変わったのは尊が言ったように、名字と部屋が一緒になっただけ。

朝どちらかが早かったり、夜遅かったりするせいで夫婦らしい生活なんて程遠く、同じ部屋にいても対戦相手の分析をしていたりで、結局何もないまま時が過ぎていく。

こんなの入籍した意味あるの?

お互い試合が近くなるとピリピリして話もしない。




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