銀杏
家に帰るとクタクタで、尊と顔を合わせても「ただいま」とか「お帰り」と挨拶をする程度。
まともなコミュニケーションはない。
でもどちらが先に寝ていても手を繋ぐことで安心できた。
ぎゅっと握って反応がなくてもいい。
側にいれることが幸せだった。
気持ちにモヤモヤを抱えながら、それでも練習に打ち込んでる時間はそのことに集中する。
ある意味ほっとできる。
お義母さんはどうだったのかな。
確か結婚した時はお義父さんは選手だった筈だ。
水泳とテニスじゃ比べられないかもだけど…気持ちは同じかもしれない。
その日の夜、お義母さんに話があると切り出した。
お義母さんは穏やかに微笑み、分かっていたというように頷く。
「咲ちゃん。夫婦ってね、ただ好きなだけじゃいられないのは分かるよね?それとも好きというだけで一緒になった?」