銀杏


俺は何をしてる?
何をしようとしてたんだっけ?
誰かと一緒にいた筈だ。
誰?

俺はどこにいる?
ああ…頭が重い。

苦しい。
誰か助けてくれ…

遠くで何か音がしてる。
何の音だ。
…そうか、車の通る音。
車?

…胸が痛い。
傷ついたとか…殴られたとか…そんな痛みじゃない。
もっと…ずっと深いところで疼いてる。

目が霞む。
俺は一体何を見たんだ。はっきり見たいのによく見えない。

手…あの手はどこだ。
いつも傍にあった…愛しい手。冷たいけれど温かい、安心できる優しい手のひら。

マメだらけのガサガサの手を好きだと言ってくれた…。

……咲…

そうだ!咲を探してたんだ。
早く起きなきゃ!
こんなとこでのんびりしてなんかいられない!

でも起き上がれなかった。



あの人だかりで人とぶつかりケータイを落とした。それを誰かが蹴飛ばしてしまった。
道路の方へ飛んだのを拾おうとしてバイクと接触。
頭を打った以外は軽い打撲とかすり傷ですんだ。




< 717 / 777 >

この作品をシェア

pagetop