銀杏
〈咲side〉
バスに乗ろうとして目に入ったのはお兄さん。ううん、お父さん。
初めはまさかと目を凝らした。
でも遠退いていく後ろ姿ではよくわからない。
もっとよく確認しようと無意識にバスから離れた。
見失わないように必死になって追いかけた。
どこを通ったかなんて覚えてない。
歩行者の信号が点滅していたのに気づかなかった。
走って渡ってしまったお父さんの後を焦ってついて行ってしまった。
回りが見えてなかった。
追いかけるのに夢中で。
クラクションが大きく鳴り響いた。
……お母さん…!
自分でもどうしてそんなことを思ったのか分からない。
身体が宙を舞っている時、
『お母さんと同じ?お母さんもこんなだった?』
身体が地面に叩きつけられ何も分からなくなった。
どうやってここへたどり着いたのか、草原に一人ぽつんと立っていた。
ここはどこ?
前にも来たことがあるような…ないような…