銀杏
裸足で草の上を歩くとチクチクとした感触がくすぐったい。
ゆっくり歩いて行くと小川に出た。
水の流れる音だけが聞こえる。
風が吹いているのに草の擦れる音はない。
よく見ると曇っているのかいないのか、空は薄曇りのように一面真っ白。
不思議。
この景色、前にも見たことがある。
どこだっけ?
小川の向こう側に影が見える。
そうか、夢で見たのと同じだ。
その影はじっとして動かない。よく見ると女の人が座って花を摘んでいるのがわかった。
いつからいたのかその人の傍には犬がいて、こちらに向かって吠える。
その声にこちらに顔を上げた。
私を見つけると慌てて立ち上がり、持っていた花を落として奥の方へ走り去ってしまった。
……ここがどこか教えて欲しかったのに。
突然後ろから誰かに抱き締められた。
ぎゅううっと包み込むように温かい腕の中、ほっとして力が抜けた。