銀杏


葉書?

「そこにはね、仕事が軌道に乗ったことと近況報告が綴られていたんだ。
北海道で結婚したって。
だからもう遠慮することなく、君の側にいれる。

…咲。
毎日顔を見てると少しづつ回復してるのがわかるよ。ほんの少しだけど顔色がよくなってる。

……咲?」

必死になって起きてることを伝えたかった。握られた手の指先を動かしてみた。
微かに人差し指と中指が反応したと思う。

お父さんに…抱き締められた。
耳元で「よかった」と何度も繰り返し、頬に触れた。
手を更にしっかりと握った後、先生か看護師を呼んだみたい。
だけどやって来た時にはまた眠りに就いていた。



それからおよそ半年。

入院生活は続いていたものの、車椅子を使ってかなり自由に動けるようになっていた。

後はリハビリの進み具合で退院の日取りを決める予定だ。

だけど……。




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