銀杏
俺はあの時からずっと思っていたんだ。
でも天宮さんに対する気遣いも遠慮もあって言い出せなかった。
それが今になって咲を苦しめる結果になってしまうなんて。
だから今度ははっきり天宮さんに伝えるよ。
『咲と暮らしたい』
天宮さんの奥さんは、
「やっぱり思っていた通りになったじゃない。あの時言ったでしょ、咲ちゃんと離れることになるんじゃないかって。
それにあの子はもう尊と…」
言いかけた言葉を尊くんが遮った。
「母ちゃん!言わなくていい。…博貴さん。それが咲のためならお願いします。でもいつか必ず帰るように伝えて下さい。いつまでも待っていると。」
こうして退院後は咲と暮らすことになった。