銀杏


でも咲は尊くんといつか結婚するのは分かっている。

咲は何も言わないけれど、もしかしたらもうしてるのかも…と思う時がある。
入院中の名前が『天宮』になってたからだ。
養子だとしたら結婚は無理。
そう考えると既に結婚している可能性は高い。

尊くんも俺のせいで逢うのを遠慮してるのかもしれない。

だったらこのままでいい訳がない。
まるで尊くんと咲の関係を俺が裂いてるみたいだ。

…咲の記憶はまだ戻らないのだろうか。
彼との関係を訊いても大丈夫なのだろうか。
時が経つにつれてだんだん不安になっていく。



近頃、めっきり寒さも進み銀杏が色づき始めた。

久々に銀杏並木に行かないかと誘ってみた。

咲は喜んでついてくる。
遠くから見ると見事なまでに黄色に染まってる。
俺の腕に掴まりながらゆっくり歩いていく。
…と、急に足が止まった俺を振り返った。

「どうしたの?」

咲が俺の視線の先を辿ると……




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