銀杏
「……尊…」
俺から離れて、彼の元に走った。
「久しぶりだね!元気にしてた?」
屈託なく笑う咲は、彼もまた事故に遭っていたことを知らない。
あの時、俺は咲に初めてのプレゼントをしようと買い物に行ったんだ。そう、クリスマスのね。
咲が追ってきてるなんて全く気づかなかった。
横断歩道を渡った直後にすぐ後ろで響くクラクション。
振り返ると人が飛ぶのが見えた。
それが咲だなんて思いもしなかった。
救急車が到着するまでに、同じ場所でもう一つの事故。
今度は尊くんだ。
一体どうなってるんだと目を疑った。
夢であって欲しいとどんなに願ったか。
二人は別々の病院へ運ばれ、天宮さんは尊くんに、俺は咲につくことになった。
天宮さんに何度も咲の様子を連絡し、尊くんのことを訊いた。
でもいつも『大丈夫』の一点張りで『咲をお願いします』と言われるばかりだった。