銀杏


彼女たちが去った後、じっと考えた。

みんな待っててくれてるの?
お父さんも、尊も…。

『ずっと…待ってる』

お父さんと暮らし始める前に尊が言ったらしい。

それは選手として…?

たぶん違う。

一緒に暮らすこと…?

いくらそれまで一緒に住んでたとは言え、実の父親が見つかったのだから、その父親と暮らすのが筋でしょう。
何で待ってるなんて…?

えっと……何か大事な…、とっても大切な約束をした。

んーと…尊と約束したんだ。
お父さんが見つかったら……

その時、すぐ横を一組のカップルが通り過ぎた。

「たくさん買っちゃったね。買い過ぎた?」

「いいって。結婚したばっかで家の冷蔵庫空っぽなんだから。
明日から頑張って作って?」

「うん。新米奥さんだけど頑張る!」

「あははっ。自分で言ってら。」

…奥さん。

……天宮さんの奥さん…

…天宮咲

『ぶふっ。尊が夫だって。変なの。』

『お前だって妻だろうが。』

『天宮咲。早く慣れてね。』

この記憶は…何?
とても温かい…胸がきゅうっっと締め付けられる。




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