銀杏
『入籍…しない?』
『博貴さんが見つかったら、この絵のように結婚式をしよう』
……約束。
何でこんな大事なこと忘れてたんだろう。
尊。
ごめんね。思い出したよ。
まだ尊は待っててくれてる?
覚えてくれてるよね。
思い出した…て早く伝えたい。
……でもお父さんは?
私が尊の元へ行くということは一人になるということ。
やっと親子らしく暮らせるようになったのに。
………
どうすればいいの?
一度は天宮の家に向かって歩き出した足は、動かなくなってしまった。
いつも悩んだり、答えに迷った時は銀杏並木に行った。
樹を眺めて気持ちが落ち着いたら、いつの間にか答えは導き出されてた。
苛立つ時も、悲しい時も、全てぶつけた。
銀杏並木に行けばきっと…!
もう、日はとっぷりと暮れている。冬の日暮れはあっという間にやって来る。
銀杏並木も既に街灯に浮かび上がっていた。
と言っても、葉は散って寒々とした枝が冬支度をしているだけだ。