銀杏


「何で博貴さんに相談しない?お前の親だろうが。」

「だってお父さんはきっと期待してる。
自分が志半ばで終わってしまったから、私には頑張って欲しいって。
だから私も期待に応えたくて…」

「…博貴さんがそう言ったのか?」

「ううん、違う。でも分かるの。私がまた泳ぐのを待ってる。」

尊は一つため息を吐くとじっと咲を見つめた。

「それ、博貴さんが知ったら悲しむだろうな。」

「何…で?水泳を続けることはお父さんも望んでることでしょう?」

「博貴さんは親だけど先輩でもあるんだぞ。
なぜ相談しない?
身近に居ながら咲が悩んでることを相談されないなんて…辛いぞ?」

「……」

「それに咲は相手の気持ちも聞かずにあれこれ先回りして考え過ぎ。
仮に本当に咲に期待してたとしても、それを伝えないのも意味がある…てことだ。」

「伝えないことにも、意味がある?」




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