銀杏
尊だけだよ。
私には尊だけ。
この想いは言葉にならない。
『好き』という気持ちも『愛してる』という想いも、一言では言い表せられない。
…信頼
…安心
…愛情
そんなものすべてが入り交じった感情。
いつからこんな気持ちになったのか。
もっと尊を見ていたい。
もっと声が聞きたい。
もっと触れたい。
「本当はね、自分では分かってるの。もう水泳を続けられないこと。
いつまで経っても主治医の許可が下りないし、息苦しくて息が続かなかったから。
少し無理すると咳が出るし。
ふふっ…。似た者夫婦っていうのかな、こういうの。」
「…感情……ぶちまけてもいいぞ。俺が全て受け止めてやる。」
「でもっ…」
「悔しいだろ?不本意にこうなって。思いっきり泣けよ。心に溜め込むな。」
「尊は?尊は泣いたの?」
「…さあ、どうだったかな。」