銀杏


雪乃は俺と結婚するつもりでいたと、後になって知ることになった。

俺たちが初めてここを訪れた時、神父様がお祈りをして、静かに見守ってくれてた。
二度目に来たときは俺一人。すでに雪乃は姿を消した後だ。
一人でやって来た俺に神父様は言った。

「今日は貴方ですか。どうされましたか?」

「今日は?それはどういう意味ですか?」

「先日、お相手の方が来られましたよ。結婚式の予約をしたいと…」

予約?

「いつか分からないけどその時はお願いします、と頭を下げてらっしゃいました。
『将来恋人と結婚できますように』
そう言い残して出て行かれた。
恋人というのは貴方のことでしょう?」

雪乃の言葉に隠された想いを知った。

それからずっと雪乃を信じて待ち続けた。

俺の想いは叶えられなかった。




< 764 / 777 >

この作品をシェア

pagetop