銀杏
雪乃は俺と結婚するつもりでいたと、後になって知ることになった。
俺たちが初めてここを訪れた時、神父様がお祈りをして、静かに見守ってくれてた。
二度目に来たときは俺一人。すでに雪乃は姿を消した後だ。
一人でやって来た俺に神父様は言った。
「今日は貴方ですか。どうされましたか?」
「今日は?それはどういう意味ですか?」
「先日、お相手の方が来られましたよ。結婚式の予約をしたいと…」
予約?
「いつか分からないけどその時はお願いします、と頭を下げてらっしゃいました。
『将来恋人と結婚できますように』
そう言い残して出て行かれた。
恋人というのは貴方のことでしょう?」
雪乃の言葉に隠された想いを知った。
それからずっと雪乃を信じて待ち続けた。
俺の想いは叶えられなかった。