銀杏


咲たちが式場探しに苦労してるのを知って、ここを教えた。
ここはブライダルサロンにも雑誌にも紹介されてない。地元でも一部の人しか知らない小さな教会。
大きな公園の脇にひっそりと建っている。



バージンロードを咲と歩く。

尊くんのところまで歩いても離れようとしない。
そっと咲に囁いた。

「…後ろで咲たちと一緒に雪乃と式を挙げる。」

納得したのかすんなり離れた。

神父様の言葉に合わせ心の中で唱える。

『一生雪乃を愛するよ。俺たちは心で繋がっている筈だから。』

持ってきた雪乃の写真を見つめてキスをした。



家に帰り玄関を開けると同時にフワリといい香りがした。

ああ、咲の残り香か…。
今まで当たり前で気づかなかったことに気づかされる。
短い間だったけど確かに咲はここにいて、一緒に生活していたんだ。

ふう…

短いため息を吐く。

そうだ。

着ているスーツのジャケットから雪乃の写真を取り出した。




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