銀杏
「これは咲と佐古田が中学の時に約束していた曲で…」
え…まさかあの時の曲?
「曲目は『きらきら星変奏曲』。」
もう時効かな、て諦めてたのに覚えててくれた。
それだけでも嬉しいのに、演奏にも凄く感動したんだ。
お馴染みのメロディーから入り、弾けるような音が響く。
指使いの激しいパートに移って、短調のパートへと変わる。
ゆったりとした主題が流れた後、テンポが上がって盛り上がる。
あの時と違って何倍もスケールアップして感動が膨れ上がった。
涙が止まらない。
ぐしょぐしょになった咲の頭を尊がポンポンとした。
耳元で「この曲、咲にぴったりだな。」と囁かれて、更に涙が溢れた。
そりゃそうだよ。
当時、私を想って先輩が選んだ曲だもん。
そんなこと尊には言えないけど。
そして今度は二人のためにと『愛の夢』。リスト作曲の溢れる想いが伝わるような曲。
ゆったりとしたメロディーが『愛』を感じさせる。
鍵盤から弾き出される音が心に染み渡った。
こんな素敵なプレゼントに今までにない感動を覚え、先輩と友美に感謝した。