銀杏


〈友美side〉

「はあー、終わったね。」

「おう、お疲れ。」

家に帰ってソファーにドサッと腰かけた。

「ピアノ演奏、ありがとね。咲たちすっごく喜んでた。選曲がよかったよ。センスが光ってた。」

聖司はネクタイを外しながら答える。

「ははっ、そうか?
きらきら星なんて久しぶりに弾いたよ。懐かしかった。」

「…咲はいいよね。中学の時、既に聴いてるんだもの。」

「あれ、妬いてる?」

「そうじゃないけどさあ…なーんか、ねえ?」

「そう言うなよ。昔のことだろ。友美はこれから嫌っていうほど聴くんだから…」

「でもそれって演奏会のための練習でしょ。私のためになんて一度も…」

「こら。それ以上言うと怒るぞ。もうちゃんと聞こえてるんだから。」

そうだった。
来年には生まれる新しい命。

「環境的にはいいよね、いつもピアノの音がして胎教にはバッチリだし。…あ、動いた!」

「どれどれ?」

慌てて友美の傍に来てみるけれど…

「ここ…あ!また動いた。」




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