銀杏
直希…?
誰だ、それ。
「おい、待て。それって…」
無情にバタンッと閉められた玄関。
まさか…彼氏?
いや、違うだろ。ただのクラブの仲間だよな?
納得のいく理由を探しだして、痛む頭を抱えながら起き上がった。
もう16年か…。
コップに水を入れ飲み干す。
今でも咲を思い出して寂しくてたまらない時がある。
そんな時は色んな思い出が頭の中を駆け巡る。
俺たちの幼い頃から、たくさんの思い出がありすぎて、眠れなくなるんだ。
娘には二日酔いだと誤魔化すけれど、酒の臭いもしないのだからばれてるのかもな。
咲…君の残した娘は高校生になったよ。
彼氏までできたようだ。(違うと思うが…)
早いものだな。
母親の記憶がある方がいいのか、ない方がいいのか…。
あの子は何も言わないけれど、時々咲のことを訊いてくる。