銀杏


しばらくすると――

コン…とノックをしたような気がした。

雨は本降りになって、ザーザーと音を立て、雷の音も近い。

布団を頭から被った。

今度はコンコンと、しっかりとした音が聞こえた。

「尊?」

言うや否や、慌てた様子で部屋に入り、急いでドアを閉めた。

尊は毛布を体に巻きつけ、少々上ずった声で、「だ…大丈夫か?」と言いながらベッドへと近づいた。

その時、一際部屋の中が明るくなった途端、ものすごい雷鳴が響き渡った。

「うわっ!」「きゃっ!」

二人同時に声をあげ、咲は目を閉じ耳を押さえた。




< 79 / 777 >

この作品をシェア

pagetop