銀杏


時折、ゴロゴロと鳴る度に尊の手は力が入る。

次第に雷は遠ざかっていき、雨もさっきより幾分ましなようだ。

「尊、もう大丈夫だよ。…尊?」

毛布を引っ張っても今度は何も言わない。

顔を覗くと、安心したように穏やかな顔をして眠ってる。

幼い頃と同じ顔だ。
毛布一枚じゃ風邪引いちゃうよ。

咲はベッドから下りると尊の横に寝転んで、二人一緒に自分の布団を掛けた。

おやすみ、尊。

咲もまた深い眠りに落ちていった。




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