銀杏


「罰。」

「え。な…何?」

尊は左手の手袋を取ると咲の目の前にかざした。

「これはめろ。」

「…うん。」

大きい…。うふっ、暖かいや。

手袋をはめた手を頬に当てる。

「右手出せ。」

きっと怒ってる。ここは素直に言うこと聞かなきゃ。

手のひらを上に向けて差し出すと、尊はその上に自分の手を重ねた。

「うわ!冷てえ。氷みたいじゃん。」

ぎゅっと握ると自分の上着のポケットに入れた。

え…えええええ――!?

「た…尊、どうしたの?」

「どうしたの…て。温めてやってんじゃん。嬉しくないのかよ。」

「う…嬉…しい。」




< 84 / 777 >

この作品をシェア

pagetop