銀杏


「ねえねえ。おばちゃんとおじちゃん、楽しんでるかな。」

「二人で出かけるなんて滅多にないからな。父ちゃんはともかく、母ちゃんははしゃいでるだろ。」

「尊は?尊は私と一緒で楽しい?」

「いや、子守りは疲れる。」

「何よぉ!!それどういうこと!?」

ぶーっと頬を膨らませた。

「いちいち膨れんな。あー、楽しい楽しい。」

わざとらしい言い方に更に膨れた。それでも手を繋いだまま離さない尊。

照れ隠しで咲を怒らせることを言うのはわかってる。でももう少し言い方があるでしょうに…。

同い年なのにほとんど一年違う誕生日。

尊は4月で咲は3月。

小さい頃は出来ることに差が出た。

保育園でかけっこをすれば当然負ける。勝ちたくて何度も『もう一回、もう一回。』と頼み、最後には尊を怒らせた。

折紙をしても手先が器用な尊は上手にできて、うまくできない咲はビービー泣いた。

こうして思い出しても私は尊について回ってたことしか覚えてない。

尊は私が忘れてしまっている思い出を覚えているのだろうか。

あの頃からずっと好きだった。

尊は…どう思ってる?




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