銀杏
並んでしばらくすると入場開始のアナウンスが流れた。
席に座ったところで後ろから誰かが呼ぶ。
「天宮くん?」
振り向いた尊の目線の先には同い年ぐらいの人。
「偶然ね。こんなにたくさんの中から会っちゃうなんてびっくりしちゃった。そうだ。私たち3人なんだけど、この後一緒に回らない?みんな女の子だけど天宮くんと仲いい子ばっかりだし。」
私が隣にいるのに気づいてないのか、無視なのか…。どっちにしてもムッときた。
「でも今連れと一緒だから。」
「連れ?誰?」
「こいつ。」
手首を掴んで手を上に挙げられた。
「あれ。いつも一緒に帰ってる子じゃない。幼なじみ…だっけ?やあね、休みの日にまで追いかけられてるの?
そんなに一緒だと息が詰まっちゃうよ。私たちと一緒の方が楽しいって。」
明るくケラケラと笑いながら話をするその人は、口調は優しいけど言葉にトゲがある。