銀杏
尊は覚えてるのかな。
偶然を装って、右隣にいる尊の横へ腕を下ろした。
トン…と指先が尊に当たって、尊の指が咲の指を絡めとる。
覚えてくれてるの?
あの時と同じように小指を繋いでじっと星を見つめた。
あ、流れ星。
流星群が次々と流れ落ちていく。
ここの流れ星もお願いを聞いてくれるといいのに。
上演が終ってたくさんの人の流れに乗って会場を出る。
出る時にもう一度手首を掴む尊に「ねえ。」と声をかけた。
「さっきここを出たらおじちゃんたちと合流するって言ってたけど、まだ早いよね?」
「あぁ、あれは口実。咲と一緒にいるのにわざわざ先輩といる必要ないだろ。」
尊の優しさにトクン…と胸が鳴った。