スイーツラブ~お菓子みたいな甘い恋~[短編集]
「はい……」


雪菜は、申し訳なさそうに皐月を見上げた。

彼女の濃い紅茶色の髪が風になびいて。

舞い散る花びらと、絡み合う。


皐月は、一瞬。

その光景に見とれた―――…


「あの、本当に大丈夫ですから! 花岡先輩、戻りましょう?」

「待てよ」


慌てて去ろうとする雪菜の腕を、皐月がとっさに掴んだ。


「……え?」


雪菜は、腕と皐月を交互に見比べる。


「行くぞ」

「えっ、どこに? 秋本先輩!?」


皐月は雪菜の腕を掴んだまま、ずんずんと歩き出した。

唐突すぎる行動についていけず、花岡は呆然とふたりの背中を見送る。


「行っちゃった。私たちも戻りましょうか……って、遠藤先輩?」


花岡が振り向くと、遠藤は道端にしゃがみ込んでいた。


「花岡ぁ……俺、雪菜ちゃん狙ってたのにぃ~」

「…………」


花岡は首を横に振りながら、憐れむように遠藤の肩を叩いた。


< 40 / 70 >

この作品をシェア

pagetop