四竜帝の大陸【青の大陸編】
りこが寝入ってしまった同時刻。
セイフォン国の中枢は……荒れていた。

世継ぎの王子の誕生日で浮かれていた彼等の心は、奈落に落とされていた。
が。
心理的にはそうでも、足掻かなくてならない。
彼等には国を、民を守る義務がある。

「陛下! 殿下の意見は国を滅ぼします!」

大臣の一人が顔を真っ青にしつつ叫んだ。
初老のゼイデ伯は普段は物静かな紳士だが、髪を掻き毟り唾を飛ばし叫ぶ様は彼から<いつも 温厚な紳士の手本のような大臣>という看板をぶち壊してしまった。
ゼイデ伯の変わり果てた姿に周りの人間達は逆に冷静さを取り戻していった。

「落ち着け、ゼイデ。あの方は意味の無い虐殺などはなさらない。国も民も安心だ。術式を行ったミー・メイの主で国の王である余の首で……駄目かの?」

見る見るうちに青から赤に変化したゼイデの顔を見てしまった国王ロイバウドは口を閉じた。
ゼイデは乳兄弟で半世紀以上の付き合いだ。
王として覇気・能力が足りないが善人なことだけが救いだと近隣諸国から言われている自分を助け、補佐してくれている忠臣……友人だ。

「陛下の首を差し出すなら私も腹切って自害します!……このぼんくらが!俺様の案を聞いてなかったのか?<監視者>に連絡して異界人を差し出す!ミー・メイと一緒にな!」

態度と口調が豹変した彼から一同が一斉に距離をとった。
ここに集った上級官僚は知っていた。
ゼイデ・ガロ・フイ。
彼が普段は猫を被っていることを。




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