四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこ、どうだ? それが“かれー”なのか?」

金の眼がきらきらして見えるのは、錯覚じゃないと思う。
美貌の無駄遣いみたいな無表情な顔の中、金の眼だけが感情豊かに変化する場所。

このきらきらは……期待かな?
食卓の上の自称カレー(?)に戸惑う私に気づいたハクちゃんが、壁に背中をくっつけるようにして立つおじ様……バイロイトさんに視線を向けた。
バイロイトさんはここの支店長さんで、すらりとした長身のナイスミドルなのです。

濃いグレーのスーツが、すごく似合っている。
セイフォンよりも衣服が近代的な国なのかな?
ハクちゃんの格好もファンタジー丸出し風(?)からかなり変化していたし。

細身の革パンに黒いブラウス。
足の長さにびっくり仰天しちゃった……日本人の敵だ! 
なんか悔しいです!

相変わらずの全身真っ黒コーディネート。
悪の大魔王様からマフィアのボスか殺し屋に変更!? 
あ、ホラー系でもいけそう。
う~ん、せっかく美形なのになんでこうなっちゃうの?

美形過ぎるから?
確かに性格はちょびっと難有り、いや、かなり難有りだけど基本は素直でかわいい俺様君。
黒じゃなくて、柔らかな色を今後は着せてみたいなぁ。
ま、白状するとマフィアのボスみたいなのもかっこいい。

「あやつが……それがかれーだと。もしや違ったのか? かれーじゃないのか、それは」

うっ!
目の前の物体から逃避している場合じゃな~い!
私から見てもはっきり分かるほど青くなった顔に放たれた殺人光線的視線に、これはまずいと直感した私は急いで宣言した。

「カレー、うん、“かれー”です! これはかれー! 美味しいです! 支店長さん、ありがとうございますっ!」

私はトマトケチャップとマスタードらしきものがたっぷりかかった……見た目焼きうどんな物体を思い切って口に入れた。
むむっ……ぐぇっ?
甘酸っぱいのはケチャップとして。
チョコレートの風味は、まさかマスタード!?
不味い。
なんなの、これ?
麺料理の1種だろうけど。
炒めたバナナに似た果物と青菜そして海老にチョコ味がねっとりとからみつき、咽喉越しも最悪!
でも、食べないとバイロイトさんが危険なのよ!
人の命がかかっているのよ、りこ!
頑張れ、私!
息を止めて、飲み込むのよ!!
 
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