四竜帝の大陸【青の大陸編】
リゾットをてんこ盛りにしたスプーンを私の口元に持ってきたハクちゃんは、口を開けない私に首をかしげた。
「りこ、どうした? “あ~ん”だぞ?」
な……なにぃ?!
「この2日間、こうして蜜薬を与えてたろう? あぁ、意識があやふやだったから覚えていないのか。我はスプーンでの“あ~ん”を、カイユに習ったのだ」
く、薬……?
ああああ、あ~んっ!?
記憶無いです。
まったく、1ミクロンも!
この2日間……私、どうしちゃってたのぉお~お!?
「ヴェルヴァイド様。スプーンに盛る量が多すぎるのです。だからトリィ様は御口を開けないんです」
カイユさん!?
ち、ちがうぅ~!
「なるほど。多量を口に入れたほうが効率が良いかと思ったが、我が間違っていたな。確かにりこの咥内容量を考慮すべきだ」
カイユさんの指摘を素直に受け入れたハクちゃんはてんこ盛りリゾットを半分以下に減らして、再びスプーンを差し出した。
「りこ。あ~ん」
追い詰められた私は、室内にすばやく眼を走らせた。
ダルフェさん……あぁ、彼は厨房か。
誰かこの状況をなんとかしてぇ~!
あ。
支店長さん。
おじ様は私と眼が合うと、にっこりと微笑んだ。
そしてうんうんと頷きながら、軽い足取りで部屋を出て行った……。
あぁ。
孤立無援。
自力で切り抜けなくては!
「ハ、ハクちゃん! 私、元気。だから、ご飯は自分で食べる! 気持ちだけで充分だから」
ハクちゃんの手からスプーンを奪おうとしたら……避けられた。
む!
「我はあ~んがしたい。我もりこの役に立てて……嬉しかったのだ」
ハクちゃんは私の顔を覗き込むようにして、続けて言う。
「我はダルフェのように料理もできぬし、カイユのようにりこの世話もできぬ。抱っこも失敗してりこに怪我をさせる無能者だ。しかも我の我慢のなさがりこの身体に負担を強いてしまう結果を招き、りこに怒られるのは当然。名誉挽回の為にも、この“あ~ん”は今後も精進を重ねていきたいと考えている。さあ、りこよ! あ~んだ。あ~ん」
やっぱり。
ハクちゃんて、素直なのよね。
でも。
ポイントがずれてるっていうか。
「りこ。あ~ん」
まったく。
かなわない。
「……あ~ん」
私の口に慎重にリゾットを運び入れたハクちゃんは、びっくりするくらいゆっくりとスプーンを引いた。
私が嚥下したのを確認すると、金の眼を細めて空になったスプーンを眺める。
「あと2品ある。何回も“あ~ん”ができるな」
新しい遊びを覚えた子供のように、ハクちゃんの金の眼が輝いていた。
ど、どうしよう!?
「りこ、どうした? “あ~ん”だぞ?」
な……なにぃ?!
「この2日間、こうして蜜薬を与えてたろう? あぁ、意識があやふやだったから覚えていないのか。我はスプーンでの“あ~ん”を、カイユに習ったのだ」
く、薬……?
ああああ、あ~んっ!?
記憶無いです。
まったく、1ミクロンも!
この2日間……私、どうしちゃってたのぉお~お!?
「ヴェルヴァイド様。スプーンに盛る量が多すぎるのです。だからトリィ様は御口を開けないんです」
カイユさん!?
ち、ちがうぅ~!
「なるほど。多量を口に入れたほうが効率が良いかと思ったが、我が間違っていたな。確かにりこの咥内容量を考慮すべきだ」
カイユさんの指摘を素直に受け入れたハクちゃんはてんこ盛りリゾットを半分以下に減らして、再びスプーンを差し出した。
「りこ。あ~ん」
追い詰められた私は、室内にすばやく眼を走らせた。
ダルフェさん……あぁ、彼は厨房か。
誰かこの状況をなんとかしてぇ~!
あ。
支店長さん。
おじ様は私と眼が合うと、にっこりと微笑んだ。
そしてうんうんと頷きながら、軽い足取りで部屋を出て行った……。
あぁ。
孤立無援。
自力で切り抜けなくては!
「ハ、ハクちゃん! 私、元気。だから、ご飯は自分で食べる! 気持ちだけで充分だから」
ハクちゃんの手からスプーンを奪おうとしたら……避けられた。
む!
「我はあ~んがしたい。我もりこの役に立てて……嬉しかったのだ」
ハクちゃんは私の顔を覗き込むようにして、続けて言う。
「我はダルフェのように料理もできぬし、カイユのようにりこの世話もできぬ。抱っこも失敗してりこに怪我をさせる無能者だ。しかも我の我慢のなさがりこの身体に負担を強いてしまう結果を招き、りこに怒られるのは当然。名誉挽回の為にも、この“あ~ん”は今後も精進を重ねていきたいと考えている。さあ、りこよ! あ~んだ。あ~ん」
やっぱり。
ハクちゃんて、素直なのよね。
でも。
ポイントがずれてるっていうか。
「りこ。あ~ん」
まったく。
かなわない。
「……あ~ん」
私の口に慎重にリゾットを運び入れたハクちゃんは、びっくりするくらいゆっくりとスプーンを引いた。
私が嚥下したのを確認すると、金の眼を細めて空になったスプーンを眺める。
「あと2品ある。何回も“あ~ん”ができるな」
新しい遊びを覚えた子供のように、ハクちゃんの金の眼が輝いていた。
ど、どうしよう!?