四竜帝の大陸【青の大陸編】
「こんな世界、嫌い。大嫌い」
「……」
優しい手が、頭を撫でてくれる。
「帰りたい。でも、ハクちゃんが……ハクちゃんが私を、私に」
カイユさんは、良い香りがする。
小さな子供のように、その腕に包まれるたびに思っってた。
懐かしい香り。
記憶には無いのに、懐かしいと感じる。
懐かしいの。
すごく、すごく……懐かしい。
「私に……全てをくれるって。私の望みは全部かなえてくれるって」
ハクちゃんは言った。
望めば。
私に<世界>をくれるって。
「世界なんかいらないの。私の望みは」
ずっと。
ずっと、探してた。
私だけの誰か。
私だけを想ってくれる人。
私だけを。
あきらめてた。
夢物語だと。
そんな人は、いないって。
有り得ないって。
でも。
見つけた。
やっと、見つけた。
私の全てを捧げます。
家族も、世界も捨てるから。
だから。
お願い。
もう。
独りにしないで。
「カイユ。私はあの人の全てを、手に入れたいの。全部、欲しいの」
髪の毛1本も、鱗の1枚だって。
誰にも渡したくない。
私だけの貴方にしたい。
カイユさんが私の耳にそっと囁いた。
「……仰せのままに。私のかわいいお姫様」
カイユさんの長い銀色の髪が、さらりと流れた。
《異界にいたのね、可愛い私の娘。愛しい子。母様は貴女の味方よ。私が土に還っても、胎の子が貴女の側に。アリーリアの血は貴女と共に。……竜族が滅びるその時まで》
この時の言葉は、私の耳には届かなかった。
竜族のみに聞き取れる特殊な周波のそれを、聞いていたのは3人。
壁の向こうに居た白い竜と。
駕籠を足に持ち、夜空に飛び立った真紅の竜と。
そして。
カイユさんのお腹にいた、あの子。
私がカイユさんの【誓約】を知ったのは。
ずっと先のことで。
『母様』に、2度と会えなくなってからだった。
「……」
優しい手が、頭を撫でてくれる。
「帰りたい。でも、ハクちゃんが……ハクちゃんが私を、私に」
カイユさんは、良い香りがする。
小さな子供のように、その腕に包まれるたびに思っってた。
懐かしい香り。
記憶には無いのに、懐かしいと感じる。
懐かしいの。
すごく、すごく……懐かしい。
「私に……全てをくれるって。私の望みは全部かなえてくれるって」
ハクちゃんは言った。
望めば。
私に<世界>をくれるって。
「世界なんかいらないの。私の望みは」
ずっと。
ずっと、探してた。
私だけの誰か。
私だけを想ってくれる人。
私だけを。
あきらめてた。
夢物語だと。
そんな人は、いないって。
有り得ないって。
でも。
見つけた。
やっと、見つけた。
私の全てを捧げます。
家族も、世界も捨てるから。
だから。
お願い。
もう。
独りにしないで。
「カイユ。私はあの人の全てを、手に入れたいの。全部、欲しいの」
髪の毛1本も、鱗の1枚だって。
誰にも渡したくない。
私だけの貴方にしたい。
カイユさんが私の耳にそっと囁いた。
「……仰せのままに。私のかわいいお姫様」
カイユさんの長い銀色の髪が、さらりと流れた。
《異界にいたのね、可愛い私の娘。愛しい子。母様は貴女の味方よ。私が土に還っても、胎の子が貴女の側に。アリーリアの血は貴女と共に。……竜族が滅びるその時まで》
この時の言葉は、私の耳には届かなかった。
竜族のみに聞き取れる特殊な周波のそれを、聞いていたのは3人。
壁の向こうに居た白い竜と。
駕籠を足に持ち、夜空に飛び立った真紅の竜と。
そして。
カイユさんのお腹にいた、あの子。
私がカイユさんの【誓約】を知ったのは。
ずっと先のことで。
『母様』に、2度と会えなくなってからだった。