四竜帝の大陸【青の大陸編】

39

「えー! もう支店を出発しちゃったの?」

驚いた。
私が寝室でハクちゃんと……その、えっと、むにゃむにゃ(?)してる間に離陸準備が終わっていたなんて!
カイユさんに頭をなでなでしてもらってる間に、竜体になったダルフェさんが駕籠を持って飛び立ったなんて……。
振動1つ感じなかったから、気づかなかった。
あ!
ダルフェさんの竜体、見損た~。
小型犬サイズのハクちゃんとは違う、大きな竜。
残念、とても見たかったのに。

駕籠には小さな窓がいくつかあるようだったけれど、外はもう暗いし……。
支店の人達に、お別れもしてない。
お世話になったどころか、部屋を壊しちゃったのに。
コナリちゃん達に怖い思いさせた(ハクちゃんが)のに、まだ謝ってない。
バイロイトさんには複雑な思いがあるけれど。

キス。
ま、欧米人なら挨拶ですし。
好きな人とのキス以外はカウントしないってルールが、乙女にはあるって言うよね?
乙女。
ちょっと、ずうずうしいかな?
う~ん。
かなり、ずうずうしい? 
ま、勘弁してもらって乙女ルールの適用を申請致します。

「トリィ様」

1人でぶつぶつ言っていた私に、カイユさんが訊いてきた。

「あれ。どうなさいますか?」

え?
カイユさんが指差した扉の隙間からは、小さな白い頭が……。

「食事……我はあ~んがしたいのだ、りこ。我はあ~んがぁっ」

うるうる、きゅいーんな金の眼に。
私が勝てるはずも無く。

「あぁもうっ、しょうがないなぁ~。早くおいでよ。あ~ん、してくれるんでしょう?」

ぱたぱたと走り寄り、私の足にしがみ付いた白い竜。
私を見上げるその姿は、とても可愛らしい。
上目遣いの視線は私の理性を溶かしてしまう。
なんてずるいの。
これって天然? 
計算?

「りこ。我が悪かった。全部、全て我が悪かった」

ワンピースの裾に小さな顔をこすり付けるようにしながら言う、白いおちび竜。

「りこ……我を捨てないで」

うっ!
駄目、もう我慢できなぁあああいぃぃ~!!

「か、可愛い、かわゆいよう!もう堪んないっ! ハクちゃん、かわゆすぎるぅうう!」

ハクちゃんを抱きしめ、悶絶する私にカイユさんの冷静な指摘が聞こえた。

「トリィ様。それの正体はあの素っ裸のケダモノ野郎ですよ?」

私の脳内で、お父さんが口ずさんでいたCMソングが再生された。

ーやめられない。
ーとまらない。

私にとってはかっぱ海老せん以上の。
麻薬のような可愛い貴方。




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