四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんは、術式で駕籠が揺れないようにしてくれた。
一晩中、ずっと。
ダルフェさんと駕籠……私を、強い風と打ち付ける雨から守ってくれた。

朝、私が目覚める時には枕元に居て。
金の眼を私のそれとしっかり合わせて。
念話で「おはよう」って言ってくれた。
天気は良いけれど風が強いからって言って、すぐにダルフェさんの所に戻っちゃったけど。 

「うっわー! わ、あれ湖? きらきらしてるね。あ、あれ何? 牧場? きゃーっお花畑かな」

午前中は、窓の外を見て過ごした。
小さな丸い窓(直径30cmくらい)に張り付いて、眺めた。

「……ダルフェさん、やっぱり見えない」

角度的に無理があり、真上は見えないのでダルフェさんの勇姿は確認できなかったけれど、眼下に流れていく点のような町並みに、次々現れる雄大な景色に見入った。

「トリィ様。お茶にしましょう。コナリの作った焼き菓子をもらってきてますから」

カイユさんがテーブルに茶器を並べ、焼き菓子を缶から取り出しながら言った。
私は窓から離れ、2つのカップに紅茶を注ぐ。

「カイユ。皆にお礼の手紙書きたいから、字を教えてくれる? ハクちゃんは字は読めるけど、書くのは苦手だから」
「ええ、いいですよ。ヴェルヴァイド様の希望で、支店から便箋も数種類持ってきました。発送は帝都に着いてからになりますが」
「ハクちゃんが?」

ハクちゃんが便箋?
便箋…手紙。
あ……恋文がどうのって、プロポーズしてくれた時に言って……。
あの後、私達。
私、ハクちゃんと……しちゃったんだ……。

「ぶぼっ!?」

むせてしまった私の背中を、カイユさんがさすってくれた。
 
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