四竜帝の大陸【青の大陸編】
「気に入ったか?」

かけらの入ったガラスポットを手に乗せ、私はそれを眺めていた。
ハクちゃんの長い指が、私の前髪に触れる。
大きな手でそっと……髪を梳いてくれた。
優しい感触が気持ち良くて、この穏やかな時間がとても嬉しく幸せな気分。

「うん! ありがとう、ハクちゃん」

ぽかぽかの温室にふかふかのラグマットを敷き、小ぶりなクッションを枕にした。
眩しい日差しは、隣で横になったハクちゃんが遮ってくれている。

「……ん」

お腹もいっぱいで、うとうとしてしまう……。
ハクちゃんは毛布かけ直してくれながら、言った。

「りこは昨夜、熱が出たのだから。ダルフェの言うようにでぇとは止め、休養することにしよう……うむ。それが良いな」

彼は私の手からガラスポットをとり、蓋を開けて中から1粒取り出した。
「りこ、あ~ん」

あ~んって……え?
条件反射で開けた口に、ハクちゃんはかけら(元・内臓)をころんと入れて……。
ほんのり甘く、舌の上でふわりと溶けたその味は。

「あ……あれ、これって駕籠でくれたのと同じだ」
「そうだ、我のかけらだ。元は我の一部なので微量だが気が残っている。りこにとって、我の気を補充する方法の1つになるはずだ……美味いか?」
「うん。おいしいけど……」
 
かけらを食べさせられたことに驚きは感じても、嫌悪感は全く無かった。
それより、気の補充ってどういう事なの?
人型のハクちゃんはもう数粒取り出して、自分の口に入れた。

「……りこ」

唇に。
ひんやりした感触。
見た目よりも柔らかだって事を、私はもう知っている。

「っん……」

口移しでくれたかけらは。
いっそう甘くて。

貴方の。
冷たい唇。
熱い舌。

どこまでも優しく。
私を絡めとリ、離さない。

「ん、あっ? ちょっ……ハ、ハクちゃ…んっ!?」
 
真珠のカーテン。
羽毛のような、穏やかで優しいキス。

額に。
こめかみに。
目元に。
顔中に、降り注ぐ。

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