四竜帝の大陸【青の大陸編】

48

「……りこ?」

脱力し、瞳を閉じたりこは我の声に反応しなかった。
柔らかで温かな身体をまさぐっていた手を止め。

「りこ」

敏感な耳元で囁くように呼んでも、反応なし。

「……む?」

我はダルフェニに言われた通り、夫として妻の健康管理の為に体液を採取しようと思い……。
うむ。 
まあ、その。
我としては、精一杯の勇気を持って寝室で誘ってみたのだが失敗したのでな。

最後まででなくとも、健康状態を確認しつつ、少々……少々とはどこまでか分からんが……進められそうならば交わろうかと。
いや、逆か。
交わりつつ、健康状態の確認を……。
我は欲張りすぎたか?
健康状態は問題なしだったが。
かけらを1度に与えすぎたな。
体内であれが馴染むまで、身体機能が一部停止状態に陥ったか……。
りこの小さな肉体では日に3粒程度にすべきだった。

「……」
 
せっかくの機会を自ら潰すとは。
我の馬鹿。
なんたる失態!
  
「まだ……加減がどうにも、難しいな」

かけらを人間に投与するのは初めてだからな。
かけらを作り出したこと自体、りこと出会ったからなのであって。
うむ。
これをを『試行錯誤』というのだな、多分。

「……りこ」
 
意識の落ちてしまったりこの顔を、じっくりと眺めた。
閉じた瞳。
濡れた睫毛。
ほんのり染まった頬。
我に貪られ、光る唇。
汗ばんだ額に張り付いた黒髪。

「どう見ても……りこのほうが我より‘かわゆい’が似合うと思うのだが」

りこは我をかわゆいと言うが。
我にとってはりここそ‘かわゆい’の頂点であり。
りこがあまりにかわゆくて、無いはずの食欲を刺激されるほどなのだ。

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