四竜帝の大陸【青の大陸編】
ダルフェさんは気にするなと笑ったけれど。
なかなかそうはいかない訳で……。

「……み、見られちゃったなんて~っ……」

私が呆然としている間に、ダルフェさんは持参した食材(下ごしらえは完璧に終わらせてあったらしい。炊いたお米も蓋付きの器に入ってた)を使い手際よく仕上げていった。
ちょっと赤みの強い卵のオムライス。
小鍋で温め直した野菜スープ。
カラフルなお豆と黄色の葉野菜で作ったサラダ。
数種類の果物の盛り合わせ。
小ぶりなケーキが2種類。

「姫さん、朝飯用のパンとかここにしまっとくから。果物、生野菜はここ。ハムと牛乳は保冷庫で……棚ん中に焼き菓子と茶葉があるからね? 調味料は容器に名前書いてあるけど、字がわかんなかったら旦那に確認してな。使い方は知らなくても字は読める人だから」

ダイニングテーブルに並べられた晩御飯は、もちろん1人分で。
銀のスプーンもフォークも1本ずつ。

「はい。ありがとう、ダルフェ……そうだ! ハクちゃん、竜帝さんのお見舞いに行った方がいいんじゃない?」

長い足を組み、横柄な態度でさっさと椅子に座っていたハクちゃんは。

「行かん」

そう言うとテーブルの上のオムライスのお皿を自分の側引き寄せ、スプーンを豪快にずぼっと刺した。

「りこ。あ~んだ、あ~ん」

むむ~、まったくこの大魔王様はっ!

「ハクちゃん! まだ、いただきますしてないでしょ? それにダルフェとお話してるから、ちょっと待って。……ハクちゃんだって、竜帝さんの事気になるでしょう?」

だいたいね。
ハクちゃんがお仕置きしすぎたせいで、竜帝さんは入院(?)になってしまったのに。
竜帝さんは大きな会社のトップだから業務に支障が出てしまい、カイユさんとダルフェさんもサポートに回らなきゃならないくらいで、ご飯も一緒に食べれないほど忙しくなちゃったのに。

「気にならん」

明日からの勉強会も、延期。
竜帝さんが教師の手配からカリキュラムのことまで1人で仕切ってたから、彼が居ないと進められないそうで……。
ハクちゃんは冷たい美貌にぴったりの、冷た~い口調で言った。

「自分が居ないと円滑に回らない組織にしていた<青>の無能さについて、我は興味が無い」

ひえぇ~っ、冷凍庫を開けた時のような冷気があぁぁ!
その冷酷魔王様発言、はまりすぎですハクちゃん!


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