四竜帝の大陸【青の大陸編】
とても広い脱衣所……脱衣所と言っていいのかな?
洗面設備にドレッサーもあり、籐のソファーやテーブル……蔦を模したアイアン製フレームがおしゃれなシングルベットまである。
側に置かれたキャスターつきの小ぶりなチェストの中には色とりどりの液体が入った瓶。
ニッパーに爪ヤスリ、コットン、大小の刷毛……ああ、このベットはエステに使うのかな?
一通り確認してからパジャマに着て、髪をタオルで巻いて。
まだ<1人水泳大会>をしているハクちゃんに声をかけた。
竜のときは念話なので浴室に戻らなくてもちゃんと聞こえるから安心。

「ハクちゃん、寝室で待ってるからね! タオル置いておくよ。ちゃんと拭いてきてね、パジャマ着せてあげるから」

ふと。
大きな鏡に写った自分の姿が眼に入る。

「……」

高校生時代から愛用のチェックのパジャマ。
しかも上だけ。
丈が長めで良かった……。

「……色気無いな~、私って」

ハクちゃん、ごめんね。
色気も胸も無い私がお嫁さんで。

しかも人型の美形姿より、ちび竜のハクちゃんにメロメロなんて。 
変な嫁だと世間は思うだろうね……ビジュアル的にも不釣合いだし。
世界中の王様達が頭を下げ、とんでもなく強く、桁外れに綺麗(怖い顔だけど)なハクちゃんの奥さんがちんちくりんの異界人なんて。
この世界の人達から大ブーイングどころかリコール対象レベル?

「……考えるの、やめよう」

寝室に行き、やたら大きなベットの上に座ってハクちゃん用のパジャマを眺めた。
裁縫が苦手な私の渾身の作品。
思ってた以上に、うまく出来たと思う。
縫い目がちょっと汚いのは、手作りならではの味があるってことで見逃してもらおう。

「喜んでくれて、嬉しかった……貰ってくれてありがとう、ハクちゃん」

ハクちゃんのパジャマを抱きしめ、喜びを噛み締めた。

「……あんなに喜んでくれるなんて……」

そういえば。
臨死体験がどうのって言ってた?
う~ん……ま、いいか。
細かいことにこだわってたら、へんてこ奇天烈思考回路のハクちゃんについていけない。

「ハクちゃん、珍しく遅い。ここのお風呂、気に入ったんだね~、きっと


いつもは一緒に出るか、ハクちゃんが先に出るのに。
今日はずいぶんとゆっくりしてる……どうしたんだろう?
< 267 / 807 >

この作品をシェア

pagetop