四竜帝の大陸【青の大陸編】
今の、術式で移動してきたのよね!?
ミー・メイちゃんが離宮に来た時は、こんな歪みはなかったけれど。
苦しそうな、うめき声。
しゃがみ込んでいた人……中年の男性で、着ているものは元の色が分からないほど汚れていた。
黒っぽい赤茶染みだらけの衣類は所々が切れていて……酷い匂いがした。
体臭とか、そんなレベルではなく。
私が今まで嗅いだ事の無い……。
逃げ出したくなるような本能的な怖さを感じる、嫌な匂いだった。
いきなり人が現れた驚きと、衝撃的な匂いに動けずにいた私をよろめきながら立ち上がった男の人の眼が捉える。
「……お?」
『っ!?』
泥と血で汚れた顔……血、血なの?
私の5倍はありそうな、かなり太ったおじさんは私を見て笑った。
ぞろりとした長い服の裾からは裸足の足が見える。
変色した血液?
つ、爪が血だらけ……ううん、爪は全部無い!
だから血が……なに、なんなの!?
このおじさん、怪我してるの?
でも、笑ってる。
とっても嬉しそうに。
誰?
と、取り合えず。
このおじさんは怪我してるみたいだし。
「あ、あの! 怪我、してますよね? 私、お城に詳しくないのでお医者さまの居場所が分らないんです」
おじさんは笑うのをやめ、私に向かって一歩進んだ。
私は思わず後ろに下がった。
臭いし、なんか怖い。
私を見る眼が、怖い。
「えっと、私の夫を呼んで助けてもらいましょう! 彼なら医務室に転移してくれ……ひっ!」
どす黒く変色し、爛れ膨れあがった手が。
私の右腕を掴んだ。
「あぁ、俺はなんてついてるんだろうな。お嬢ちゃん、俺を助けてくれよ。あんた竜族だろ? 小さいから人間かと思ったが、眼が違うもんな」
おじさんは薄ら笑いを浮かべ、媚びるように言った。
「医務室に連れてこうと思ったんだね? 良い娘さんだ。普通の竜族は大人しく、優しいもんな……奴等と違って」
掴まれた腕。
力が強くて、痛い。
「あの、腕を離して。ちょっと、痛いです! 夫を呼びま……」
あ。
駄目。
この人。
私に触った。
ハクちゃんが怒るかもしれない。
怪我してるのに、ぶっとばされ……それじゃ済まないかも。
「な、俺は怪物に追われてるんだよ。この怪我も奴等だ、仲間も殺された。ここにいちゃ殺されちまうんだ。だから逃げるのに、協力してくれ。な、いいだろ?」
怪物?
仲間の人、殺されたの!?
大変。
やっぱりハクちゃんを呼ぼう。
このお城に、人を襲うような怪物が入ってきたなんて!
他の人にも知らせて、避難とかしなきゃ!
警察とか警備の人とかに連絡を……!
「夫を呼びますから、腕を離して! 私に触ってちゃ、駄目。夫に見られたら、貴方が大変なことに……きゃっ?!」
バンッって、音。
な、なに?
顔……左側。
じんじん、ずきずき。
どくどくして、熱い。
私、叩かれたの!?
ミー・メイちゃんが離宮に来た時は、こんな歪みはなかったけれど。
苦しそうな、うめき声。
しゃがみ込んでいた人……中年の男性で、着ているものは元の色が分からないほど汚れていた。
黒っぽい赤茶染みだらけの衣類は所々が切れていて……酷い匂いがした。
体臭とか、そんなレベルではなく。
私が今まで嗅いだ事の無い……。
逃げ出したくなるような本能的な怖さを感じる、嫌な匂いだった。
いきなり人が現れた驚きと、衝撃的な匂いに動けずにいた私をよろめきながら立ち上がった男の人の眼が捉える。
「……お?」
『っ!?』
泥と血で汚れた顔……血、血なの?
私の5倍はありそうな、かなり太ったおじさんは私を見て笑った。
ぞろりとした長い服の裾からは裸足の足が見える。
変色した血液?
つ、爪が血だらけ……ううん、爪は全部無い!
だから血が……なに、なんなの!?
このおじさん、怪我してるの?
でも、笑ってる。
とっても嬉しそうに。
誰?
と、取り合えず。
このおじさんは怪我してるみたいだし。
「あ、あの! 怪我、してますよね? 私、お城に詳しくないのでお医者さまの居場所が分らないんです」
おじさんは笑うのをやめ、私に向かって一歩進んだ。
私は思わず後ろに下がった。
臭いし、なんか怖い。
私を見る眼が、怖い。
「えっと、私の夫を呼んで助けてもらいましょう! 彼なら医務室に転移してくれ……ひっ!」
どす黒く変色し、爛れ膨れあがった手が。
私の右腕を掴んだ。
「あぁ、俺はなんてついてるんだろうな。お嬢ちゃん、俺を助けてくれよ。あんた竜族だろ? 小さいから人間かと思ったが、眼が違うもんな」
おじさんは薄ら笑いを浮かべ、媚びるように言った。
「医務室に連れてこうと思ったんだね? 良い娘さんだ。普通の竜族は大人しく、優しいもんな……奴等と違って」
掴まれた腕。
力が強くて、痛い。
「あの、腕を離して。ちょっと、痛いです! 夫を呼びま……」
あ。
駄目。
この人。
私に触った。
ハクちゃんが怒るかもしれない。
怪我してるのに、ぶっとばされ……それじゃ済まないかも。
「な、俺は怪物に追われてるんだよ。この怪我も奴等だ、仲間も殺された。ここにいちゃ殺されちまうんだ。だから逃げるのに、協力してくれ。な、いいだろ?」
怪物?
仲間の人、殺されたの!?
大変。
やっぱりハクちゃんを呼ぼう。
このお城に、人を襲うような怪物が入ってきたなんて!
他の人にも知らせて、避難とかしなきゃ!
警察とか警備の人とかに連絡を……!
「夫を呼びますから、腕を離して! 私に触ってちゃ、駄目。夫に見られたら、貴方が大変なことに……きゃっ?!」
バンッって、音。
な、なに?
顔……左側。
じんじん、ずきずき。
どくどくして、熱い。
私、叩かれたの!?