四竜帝の大陸【青の大陸編】
このおじさんは、いったい何者なの?
悪い人?
でも、怪物から逃げてるって……。
怪物から逃げるのに、なぜ私を無理矢理連れてくの!?
叩いたり、手足を折るなんて怖い事を言うの!?
怪物から逃げたいなら、竜族の人達に助けてもらえばいいのに。
お城から離れるなんて、おかしい……どうして?
怒鳴るように喋るから、単語が聞き取りづらいし。
やっぱりハクちゃんを呼ぶべき!?

「ったく、こんな仕事引き受けるんじゃなかったな。お宝の情報を集めに来ただけで、別に危害を加えにきたわけじゃねぇのによ。……まあ、それだけ特別扱いってことの証明か」

仕事?
このお城で?

「早く転移しないと奴等に追いつかれるな。急がんと、次こそ嬲り殺しにされちまうぜ」

私、どうしたらいいの?
頭の中がパニックで、考えがまとまらない。
宝って言ったの?
この人、もしかして泥棒?
逃がしちゃいけない犯罪者!?
でも。
私を叩いたことは、ハクちゃんに知られたら絶対駄目。
とにかく私を放して、1人で逃げてもらわなきゃ。
ハクちゃんはすぐ戻るって言ってたから、時間が無い!



「見~つけた」



「来るな、狂犬ども! 雌を殺すぞっ!」

声と同時におじさんは私を抱え直し、叫んだ。
目の前の木から、2人の……男の子が飛び降りる。

「見つけた! 僕の勝ちだよオフラン♪」

底抜けに明るい声が響く。

「いや、これは同時だろう? パスハリス」

対照的に落ち着いた口調。
金茶で癖の強い髪の少年の言葉に、もう1人の薄い茶色の髪をした小さな男の子が言い返し……。
ダルフェさんと同じデザインの青い騎士服。
腰には剣。
背は私とずっと高いけれど、顔や表情が幼い。
この子達、まだ幼竜?

「来るな、化け物! こっちにゃ雌がいるんだぞ!」

2人はまるで今、私の存在に気づいたかのように、薄いブルーの眼と翡翠色の眼で私を見た。

「ねえ、オフラン。僕が想像してたのと、かなり違うんだけど?」
「そうだな。もっと凹凸のある妖艶な美女だとばかり……こんなミニマムな生き物だとは」

あからさまに、呆けたように言った。
そして見る見るうちに、2人の顔が青くなった。

「うわっ……金の眼だよっオフラン! そんで思わずちびりそうな、おっかない【匂い】と……心臓吐きそうな位やばいこの【気】は」
 
「「この人間、ヴェルヴァイド様の奥方様だ!!」」

え?
ハクちゃんと私のことを知って……?


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