四竜帝の大陸【青の大陸編】
「なっ? まさか! 嬢ちゃん、あんた……ひいいぃっ!」

私を放り出したおじさんは。
何か叫びながら、転移して消えた。

「あ、待てっ! 追うぞオフラン!」
「そうだな。……ここに居たら、俺達も死ぬしな。奥方様、ヴェルヴァイド様を呼んで南棟にお帰り下さい。後日、お詫びに伺います」

そう言って。
2人は木々の間を駆けて行った。
残ったのは。
地面に投げ出された私1人。

『……う。た、立てない』

立ち上がろうとしたけれど、足に力が入らない……これが腰が抜けるって事?
気分も悪いし、まだ眩暈も残ってる。
自分一人じゃ、薬草園に歩いて帰るなんて無理。
あそこで待ってるって約束したのに……。
おじさんはどっかに行っちゃったから、ハクちゃんを呼んでもいいかな?
黒の竜帝さんとのお話の途中かもしれないけれど。
ごめんなさい、私。
もう、限界です。

泥棒(?)のおじさんに会って。
叩かれて。
頬を叩かれるなんて初めてで、痛みよりショックのほうが強くて。
転移されて、放り出されて。
どうしていいか、分からない。
体調も最悪。

『あ……ハ……』

怖かった。
凄く、怖かった。
今も身体が。
震えてる。

私、怖かった。
ハクちゃん、ハク。
まだ、怖い。
怖いの。 

「ハクちゃん、……ハク!」

帰ってきて!
側に来て! 
私の、側に。


「りこ」


包まれる。
甘い花の香りに。
大好きな、貴方の匂い。
優しい腕、硬くて広い胸。
ここにいれば。
もう、大丈夫。
怖いことは、もう何も無い。

「りこ、どうし……なっ?! りこ、りこ!」
 
夕焼けを見に行くの。
貴方と2人で。

真っ白な貴方の髪が、夕焼けに染まったら。
きっと。
すごく綺麗だね。

「りこっ!!」

きっと、とても綺麗。





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