四竜帝の大陸【青の大陸編】
レモン風味の炭酸水。
シュワーっとして、甘酸っぱいの。

夏になると、飲みたくなる炭酸飲料。
最近飲んだのは、いつ?
今、9月だったから……ん?
違う。
一番最近は、あれです。
涙。
ハクちゃんの、涙。
竜のハクちゃんの涙は、あの懐かしい夏の味がしたっけ……。

あれ?
これは。
涙の味?

「……ハクちゃん?」

眼を開けると。
鼻が付くほど近くに、ハクちゃんの顔があって。
ちょっと、びっくりした。
  
「な、泣かないの、私、だいじょうぶだから、ね、泣かないで」

ハクちゃんは、泣いていた。
ぽろぽろを通り越し。
ぼろぼろと。
その涙を止めてあげたくて。
私は慌てて、彼の頬に手を沿え。
袖で涙を吹いてあげた。


「あっ……ほっぺ腫れてたから吃驚しちゃったの? ごめんね、ごめんなさい。もう痛くないから、心配しないで。泣かないで、ハクちゃん」

目元や頬に、ハクちゃんの好きなちゅうをしても。
全く止まる気配がなくて。
何も喋ってくれなくて。
精巧な蝋人形のように、微動だにしない。
金の眼をこれ以上はないって位、見開いて。
いつもはちょっと縦長の黒い瞳孔が、真ん丸く。
あれ?
真ん丸になっただけじゃない?

「ハ……ハクちゃ、ハク?!」

見る見るうちに瞳孔が、大きくなって広がって。
ハクちゃんの金の眼が。
真っ黒に変わった。

「……きゃっ!」

黒い外套を、白い光が包み。
眩しくて、眼をつぶった。
私を抱いていた腕がなくなり。

「ハ……ク?」
 
そっと眼を開けた。
尻餅を付いてしまった私の目の前には、白い竜。
服は見当たらない。
きらきらした粉が風に舞って消えて……。

「ハクちゃん?」

地面にぽてんと座って。
私を見上げる小さな竜の眼は。

まるで真珠のよう。
中央に、細い金の線が1本。

「なっ! ……ハクちゃん、どうし」

ハクちゃんの口が。
限界まで開き。

真珠色の歯。
真っ赤な舌が見えた。


「ーーーーーーーーーーーーー!!!」


声の無い、絶叫が。
青い空に向かって、放たれた。




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