四竜帝の大陸【青の大陸編】
じじいは……ヴェルはずっと、独りだった。
ヴェルは特殊な存在だから、つがいなど存在するはずがないと誰もが思っていた。

氷で創られたような外見と、全く温度の無い内面を持つヴェルには誰かを愛する感情など……心など無いのだと。
だが、どうだ!
ヴェルのおちびに向ける愛情は、竜族のそれより強く深いのかもしれない。

もし。
もしも、じじいがおちびとの子を望むなら。
セリアールの実験を……俺様は引き継ごうと思う。
子が出来れば。
もし、おちびが死んだとしても子が残り。
子が子を残して、おちびの血がずっとヴェルに寄り添ってくれるのだから。

「……ランズゲルグ! この愚か者めがっ、手加減するな! 我の臓腑が潰れるほど踏まんか! しくじったら今度こそ貴様を引き裂くぞ!!」
「へいへい、わかりましたよ~」

俺様はじじいを踏む足に、さらに力を込めた。
<青の竜帝>である俺が“ランズゲルグ”でいられるのは、それが許されるのは。
このじじいの前でだけだ。

早くに両親を失った俺様の側に。
生まれた時から。
俺様の一番傍に居てくれたのは。
このじじいだったのだから。



 
 
 


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