四竜帝の大陸【青の大陸編】
==ランズゲルグ、早く衣服を身に着けろ。カイユは仕事が早い。りこが戻ってくるぞ? 

「おい! やっぱ、手伝う気ゼロじゃねえか! おちびには、良い子ぶりやがってよぉ」
 
==衣服を手元に移動してやったではないか。我はきちんと手を貸したぞ? 今朝、りこにも言ったが……我は脱がすことは出来るが、着せることは出来ん。他人の身体に、術式で衣服を着せたことも無い。試術が面倒だから、自分で着ろ。 

「この腐れじじいがっ! 脱がすって……おいっ」

==りこがぱじゃまを脱ぐのを補助してくれたのでな。我もりこのぱじゃまを脱がして、畳んでやったのだ。我とりこのぱじゃまはお揃いなのだぞ! つまり、我とりこはらぶらぶという状態なのだ。

「世界最高齢の年寄りが朝っぱらから、何やってんだか……聞くんじゃなかった。俺様が馬鹿だったぜ」

<青>は緩慢な動作で、衣服を身に着け始めた。
溶液に1日入っただけで、ここまで回復するとは……。
 
==ふむ。身体中の神経を捻じ切り、溶かしてやったわりには良く動くな。ランズゲルグよ、我は手加減しすぎたのか? 

「あのなぁ。……あれが限界点だ。ったく、死ぬかと思ったぜ。この鬼サドじじい!」

ん?
気づいたのだが。
こやつは名を呼んでやると。

==ランズゲルグ。

「……んだよ、じじい」

 うむ、やはり。
 
==お前は未熟児だったせいか……今でも時々、幼子のような顔をするな。それとも発育不良のせいか?

「おい! だれが発育不良だ、このぼけがっ!」
 
小さな小さな<青>は、ちびの成竜に成り。
我の裾を握り締めていた手は、いつしか離れ。
我がりこを得たように、これにもつがいが現れて。

==……我は近いうちに、りこを連れ黒の大陸に移る。お前が寝てる間に<黒>と電鏡越しに会ったが、奴は一年持たん。

「……っ!」

ランズゲルグの手は、つがいと繋がれるだろう。
 
「ヴェルッ、まだ黒の爺は生きてる! 移動は爺が死んでからだって、いいんだろう? まだっ……!」

りこ、りこよ。
貴女は我を変えた。
我が思っていた以上に。
我は、貴女に変えられてしまったようだ。

=お前がこのようにちびなのは、菓子ばかり食っていたのを放置した我にも非があるやもしれん。……ふむ。餞別に、お前に贈り物をしてやろうではないか。光栄に思え、ランズゲルグよ。我が贈り物をしたのは、今までにりこだけだぞ?



< 327 / 807 >

この作品をシェア

pagetop