四竜帝の大陸【青の大陸編】
温室に戻ると、そこには女神様がいた。

「りゅ、竜帝さんっ! ああ、なんて綺麗なのっ!」

カイユさんが着ているのと同じような服だけど。
彼の着ているアオザイ風の服の色は、深海を思わせるような深い青。
全体に細かな銀糸で、蔓のような優美な刺繍。 
まっすぐでさらさらの長い髪は、前の世界では自毛では絶対に有り得ない青い色をしている。

「竜帝さんが、こんなに美人だったなんて! あんまり美人過ぎて、美女に見え……ん?」

私の裾を、何かが引っぱって……、あ、ハクちゃんでしたか。

「ハクちゃん、どうしたの? あ、竜帝さんの着替えを手伝ってくれて、ありがとう!」

床に2本足で立ち、私の裾を小さな両手で握った旦那様は皆に聞こえる念話で言った。

「りこ……<青>が綺麗で美人だと? りこは昨日、我を世界一美人だと言ったではないかっ! しかも今、これに見蕩れていたな? わ、我はもう、りこの一番ではないのかっ?!」

え?
世界一の美人?
そんなことは、言ってないと思うけど……。

「え? そ、そう? そ、そんなこと、ないよっ、ね? ハクちゃんだって、とっても美人だよ? でも、あのっ」

世界一美人って、ミスユニバースじゃないんだし。
だいたいハクちゃんは男の人だしね。
美人っていうより、美形っていった方がいいのかなって……。

「り、りこ……!?」
 
私を見上げていた金の眼が、うるる~っってなったかと思うと。


「ぎゃー、痛ってぇえええ! 何すんだよ、じじいっ!!」
 
 
女神様、ではなく竜帝さんが叫んだ。
一瞬で移動した白い竜は彼の口に両手を突っ込み、その手を左右に……うっ!?

「きゃあっ!? なにしてるの、ハクちゃん!」
「ひゃ、ひゃめろうっうう~! ひゃめ、じじいっ! ふぃ、ふふぃがふぁけるうぅううーっ!!」

口が裂けるって、言ったのかな?
口が裂け……!?
ああっ!
女神様の麗しいお顔が、台無しよっ!
 
「何って……。これの顔を不細工にしようと思ってな。りこが見蕩れてしまうような顔ならば、再生できぬほど細切れにしようかと」

くりんとこちらを振り返ったかわゆい竜はそう言って、さらに腕を左右に……まずい、それ以上はまずいよハクちゃん!

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