四竜帝の大陸【青の大陸編】

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着替えて戻ってきたハクちゃんは、全身真っ白。
真珠色の長い髪が白い外套に流れ、揺らめく。
緩やかに波打つ髪の間から覗く襟には、優美な曲線が眼を引く金細工の装飾が施されていた。
袖を通さず羽織っている外套の下も白い服で、ダルフェさん達の着ている騎士服に良く似たデザインだけど……丈が少し長い。

「……」

うわ~、似合う。
すごく、似合ってます。
天使のように白づくめなその姿。
なのに、なぜ。
天使とは、全く逆の方向に?
白い服を着たのに……ミカエル様じゃなく、ルシフェル様になっちゃった。
ああ、魔王様をイメチェンさせるには。
こうなったら、ピンクしかないのかも。
ピンク……ハクちゃんに、ピンク?

「ひいぃっ~ぃ! な、なんつうか、そのっ……怖いって、これは! 直視はヤバイでしょ!? 魂抜かれそうだしっ。すんげぇ良い男なんだけど、だけどぉぉお!」

パー・ペー系のピンクを着たハクちゃんを、脳内で想像しかけ……パスハリス君の高い声のおかげで、完成はしなかった。
彼は座り込んだまま腕で顔を庇うようにして、何気に酷いことをさらっと言った。
うう~、確かにハクちゃんは悪役系美形だけど、微笑むとすごく綺麗で素敵ななの。

「俺……陛下がじじい、じじいって言ってるから、実は老人を想像していた」

青ざめた顔のまま、オフラン君がぼそりと呟いた。
な、なんですってぇー?!
確かにハクちゃんは超高齢らしいけど。
あ! おじいちゃんでよぼよぼだから、私の膝で休んでるのも仕方ないかって思ってました?
   
少年達の少々失礼な感想など、まったく気にする様子はなく。
こちらに向かってゆっくりと歩きなら、長い指を持つ手に、白い手袋をきゅっとはめて……。
え……手袋?
初めて見た……何故、今ここで手袋が必要なの?
お部屋の中なのに?

「ハクちゃん?」
「……りこ、ここへ」

ハクちゃんは片膝をつき、両手を広げて私を呼んだ。
私は立ち上がり、魔王様度5割り増しで登場した旦那様に駆け寄り……抱きつく寸前で、止まった。
どんなに 魔王様パーセントが上がっても。
貴方を怖いとは、思わない……思えない。

「りこ?」
「あ、わた……し……」

でも。
少し不安になって、貴方の胸に飛び込むのを躊躇ってしまった。


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