四竜帝の大陸【青の大陸編】
「なんでそれの頭に、手をぶっこんでるんすか?」
「……」

答える必要性を感じなかったので無視し、西街を見下ろした。
市街に来たのは何年、何十年前だろうか?
 
ん? 
まだ<青>が赤子だっだような……。
ダルフェの視線が我の右手に向けられ、不快感丸出しの体で言った。

「旦那。そんなもん引きずって転移してきて、しかも手を頭に突っ込んだままなんて。……んなのさっさとばらして、どっかに捨てちまえばいいのに」

帝都は中央にある湖の小島に竜帝の城が建ち、城から4本の橋が街へと繋がっている。
市街は東西南北に分けられ、それぞれの街が特色と役目を持っていた。
我とダルフェが立っているのは西街中央にそびえる、この街で最も高い塔……時計台の上だ。
このように高くしては人間には目視できないが、これは帝都上空を行きかう竜の為のモノなので問題は無い。

「これは持ち主に返す。……礼と共にな」
「礼っすか?……旦那のお礼参りを受ける奴等に、さすがに同情しちまいますねぇ。俺だったら旦那が来襲する前に、さっさと自分で死んでます」

眼下に広がる西街は、商いの街だ。
数箇所に市場が常設され、大小数え切れぬ程の商店が並ぶ。
竜族だけでなく人間の出入りも激しい。
単なる買い物客や観光を楽しむ者、取引に来た商人。
それらを収容するための簡易な宿泊施設も多い。
帝都で最も賑わい、雑多な街。

「で、成果は? 返答次第では貴様ら全員の首を落とし、西街を焼き払うぞ」

ダルフェは緑の眼を細め、額を押さえた。

「ったく、勘弁してくださいよぉ。荒れまくってんのは分かりますがねぇ~。……ま、狩りは滞りなく進行してます。半時もありゃ、現在帝都にいる連中は一匹も残りません。今のところ術士11人、武人8人処理済みです。死骸はまとめてトラン火山にでも、捨ててきますよ」

今日の狩りは恙無く進行し、そして今後も続行される。
我がりこを連れ、大陸を移るまで。

「隠れていた獣まで、うまく見つけたようだな。が、手際が良すぎるな……短時間で事が運びすぎる。<青>の契約術士を使ったのか?」

<青>が個人契約を結んでいる術士は、我から見てもなかなかの逸材だった。
大陸上位の術士であり、セイフォンの魔女以上に優れた武人の才を併せ持っていた。
<青>は良い買い物をしたな、あれは掘り出し物だ。

「いえ、奴は関わってませんよ。……ハニーが先手打ってました」
「……」

カイユが?


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