四竜帝の大陸【青の大陸編】
どんなに壊しても、多くを殺しても我は何も感じない。
罪の意識など、我の中には存在しない。
 
貴女のことを知りたくて、もっと貴女に好かれる我になりたくて。
貴女の言葉や行動を、我なりに注意深く観察してきた。
 
セイフォンの連中を心の底では憎んでいるのに、我に報復を願わなかった。
我が魔女を軽く弾いただけで、真っ青になっていた。
離宮で初めてダルフェの骨を砕いた時は、悲鳴をあげた。

りこは我と違い他者を傷つけること、それを目にすることに強い抵抗感があるのだと知った。
破壊・暴力・殺戮……そういったものに関わらず、穏やかに生きてきたであろう貴女。

つがいの雌に対する竜族の性質は、人間の……しかも異界人のりこにとっては好ましいとは言えぬだろう。
我は、普通の『竜』ではない。
見た目は竜族だが、中身は……我の思った以上に中身も竜族になっていたようだが。
我がりこの為に何人、いや何千と殺したとしても竜族達は異論を唱えない。
穏やかな気質を持つ竜族だが、つがいの雌に危害を加えられた場合に相手を許すという選択肢は存在しないのだから。
四竜帝は人間と竜族の均衡を考慮し、意見してくるやもしれぬが……我の場合は力が強い分、報復の規模が一般の竜族もより大きくなるからな。
まあ、我は四竜帝のことなどどうでもいいのだ。
我が気にかけるのは、りこの反応だ。 
異界人であるりこの目に、心に……我はどう映るのか、どう思われるのか。

貴女に、嫌われたくない。

我は愚か者だから。
好きだと、愛していると言ってもらえても。 
貴女は世界より、我を選んでくれたのに……不安が消えない。

こんな愚かな我だから、自分に自信など持てぬ。

「りこ。我は贈り物で、ランズゲルグを喜ばすことは出来なかった」

呆れるか?

「りこ。我は1人では、うまく風呂に入れなかった」

軽蔑するか? 

「りこ。我は、たくさん殺してきたのだ」

嫌悪するか?

「我は……」




「ん……ハクちゃん?」



ゆっくりと開いた金の眼は、寝起きのためか潤んでいた。
 
「おはよう、りこ」

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