四竜帝の大陸【青の大陸編】
数本の骨が歯茎に刺さった。
正直、痛かった。
でも、少~し血が出ただけ。
もうなんともない。
この事から。
ダルフェさんは人間である私の為に、下処理を徹底して料理を作ってくれていたのだと知った。
彼が帰ってきたら、改めてお礼を言わなきゃ。

「あのっ、竜帝さんは悪くないです。私が確認しなかったから……ハクちゃん、ごめんね。びっくりさせちゃったね?」

骨が刺さった本人よりも、ハクちゃんがショックを受けたようで。
私が口を押さえた瞬間、真珠色の髪の毛がぶわわ~って広がった……怒った猫みたいに。
私的には小骨より、そちらにびっくりしてしまった。

「うむ……りこ。すべての骨を取ったぞ! あ~んだ、あ~ん!」

鮭フレークに変身したムニエルをスプーンにのせて、ハクちゃんは私に差し出した。
術式で骨を取り除けば確実で簡単だと、竜帝さんは言ったけれど。
ハクちゃんはそうはしなかった。
なぜ、術式を使わないのか。
私にはなんとなく、分かる気がした。

「ありがとう、ハクちゃん。……うん! 骨、無いね。すごく美味しいっ」

竜帝さんが居なかったら。
きっと、我慢できずに……私は泣きながら食べてたと思う。

「そうか、美味いか」
「うん、ありがとうハク」

嬉し泣きなら、してもいいから。

ハクちゃんが食べさせてくれた、元ムニエルの鮭フレークには。
ハクちゃんの心がいっぱい……いっぱい、入っていた。






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